「オーガニック学校給食を全国で実現する議員連盟」が、6月15日に設立されたというニュースをご覧になりましたか?
6つの異なる党から、議員30人超が党派を超えて協力体制を整え、「全国の小中学校で、オーガニック給食、有機農業を広め、子どもの健康に配慮した食材を提供することを目指す」と表明しました。
でも、一体オーガニックの何がそんなにいいのか、そもそもオーガニックって何なの?という疑問を持っている方も多いでしょう。
そこで今回は、オーガニックとは何か、できるだけ簡潔にお伝えしてみたいと思います。
難しいなと感じたり、逆にもっと詳しく知りたいトピックなどがありましたら、リンクをぜひ参照してください。
目次
- オーガニックって無農薬なの?
- オーガニック(有機)とは
- みどりの食料システム戦略について
- オーガニック(有機)とは
- オーガニックは高いのに価値がない?
- 食品の価格の違いは、どこにある?
- オーガニック給食推進の背景やメリット
- 子供にできるだけ有機食品を与えるべき理由
- オーガニックが当たりまえの社会に
オーガニックって無農薬なの?
結論から言いますと、オーガニックは無農薬ではありません。
「え?そうなの?じゃあ、カラダによくないのでは?」
大丈夫、慌てないでくださいね。
農薬には、化学合成されたものと、天然原料によるものがあり、オーガニックは決められた範囲内であれば、銅や硫黄を成分とした薬剤、天敵や微生物などを用いた生物農薬などを使うことができます。
オーガニック(有機)とは
オーガニックを理解するために、いろいろな角度から定義を見ていきましょう。
国際的な規模で有機農業推進活動を行っているIFOAM(国際有機農業運動連盟)は、オーガニックの原則として「生態系」「健康」「公正」「配慮」の4項目を掲げています。
農林水産省「有機農業の推進に関する法律」による、有機農業の定義は以下のとおりです。
・化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
・遺伝子組換え技術を利用しない
・農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する
次に、コーデック委員会(消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保などを目的として、1963年に国連食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関(WHO)により設置された国際的な政府間機関。国際食品規格の策定を行っており、日本は1966年より加盟)が規定した「生産の原則」を見てみましょう。
有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである
では、有機農業によってつくられた有機農産物(有機農産物の日本農林規格の基準に従って生産された農産物)の定義はどうでしょうか。
・周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている
・種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない
・組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わない
なんだか、いろいろ決まりがあるのか~、ややこしいな~と思いましたか?
そうなんです。オーガニックはこんなもの、ひとことで説明が終わるものではないのです。
だからこそ、理解されにくく、日本でもなかなか広まらないのかもしれません。
そこを超えて、オーガニックについて知ると、あなたの人生観や生き方を変えてしまうくらいの希望の未来がありありと見えてくるはずです。
世界には、公的基準・民間基準をあわせると、200以上のオーガニック基準が存在します。
日本の有機食品の認証制度 (有機JAS認証) は、JAS法に基づき、「有機JAS」に適合した生産が行われていることを登録認証機関が検査し、その結果、認証された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。
食品のみの基準で、オーガニックコスメやオーガニックコットン、ビオホテルなどには表示規制がありません。
エシカルでミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドする「ELEMINIST(エレミニスト)」で、オーガニック・無農薬・有機の違いについて記事を書きましたので、こちらもご覧ください。
みどりの食料システム戦略について
日本は2050年までに、有機栽培の面積を25%、100万haにする方針を「みどりの食料システム戦略」で示していますが、非現実的な話だとニュースでも耳にしますよね。
たしかに、栽培面や雑草抑制、取れ高や収益性など難しい問題が多く、そう簡単に有機農業を始めたり、いままでのやり方を転換できるわけではありません。
よく「昔はみんなオーガニックだった」という人がいますが、規格に基づく現代のオーガニックの歴史は、まだ百年くらいで浅いもの。
そんな中、先陣をきって市内の小中学校の給食に使う米のすべてをオーガニックに切り替えた千葉県いすみ市や、兵庫県豊岡市の「コウノトリと共生するまちづくり」に感銘を受けた同市の太田洋市長が、環境保全型農業を推進する組織体制を整えようと呼びかけるなど、オーガニックの動きが加速しています。
オーガニックは高いのに価値がない?
「オーガニックについて、どう思う?」という質問に対して、「オーガニック食品は値段が高い!」「オーガニックなんて、たいした意味がないんじゃないか」といった答えがかえってきます。
たしかに、値段だけを比較すれば、一般的な野菜や果物、調味料や加工品に比べ3~5倍の値段です。野菜なんて、見た目も不揃いだったり、虫がついていたり、土臭かったりするのに、どうして?オーガニックは、味がいいから高いの?
味については、人ぞれぞれの感覚の問題。
ここで、野菜や加工品を例にとり、一般的なのもの(慣行栽培)とオーガニック(有機栽培)の価格の違いはどこにあるか説明します。
食品の価格の違いは、どこにある?
私たちの食卓に野菜や加工品が届くまでには、サプライヤー→農家→加工業者→流通→消費者という過程があります。みなさんご存じですね。
オーガニックは、慣行栽培のものと比べて、ひとつひとつの段階に細かい基準が設けられています。ひとつでも、その基準をクリアしていなければ、オーガニックとはいえません。
野菜の見ためや成分を分析しても、オーガニックの絶対的クオリティーも存在しません。
食品に限りますが、規格にそって生産・製造され、オーガニック認証を受けたものだけが、「オーガニック」なのです。
※有機認証のカテゴリーは、有機農産物・有機加工食品・有機畜産物・有機飼料・有機藻類5つで、認証の基準も多少異なります。
プロセスにおける手間やコストなどがあたりまえに価格に反映、それこそが、オーガニック=「安全性が高い」「危害リスクが低い」といわれる理由。一般の野菜よりも化学的危害リスクは明確に異なります。
言い方を変えると、一般的な野菜が安すぎる、慣行栽培の野菜には、重大なコストが含まれていません。
そのことは、消費者が意識して情報を集めない限り、知るチャンスがほとんどありません。
化学合成農薬を大量につかって(想像するよりも、はるかに多量多種の農薬を日本はいまだに使っています)、虫もよりつかない野菜をつくることは、消費者のためになるのでしょうか?生産者は農薬による健康被害をさけられないままで、利益追求を続けることがベストウェイ?
慣行栽培を今すぐ止めるべきだという話ではなく、いままでのやり方で、どんな問題が起こっているかを直視すること。
健康被害や土壌汚染、生態系の破壊などは、何が原因で起こるのか?
立ち止まり、この先どうするべきかを、早急に考え直す必要があります。
残念ながら日本は世界の中で、健康や環境を守ろうという個々の意識や、私たちの暮らしが安心安全であるための法改正など、遅れをとっているのです。
遺伝子組み換えにも言えることですが、新しい技術の進歩やテクノロジーも、自然の摂理に大きく反して使われれば、当然反発があります。
不確かなものを摂取することで、誰かの健康や幸せを脅かされてはならない。
生態系が守られ、動物も自然体でいられる地球環境、生産者も消費者も誰もが公平に、みんなが十分な食事と幸せを享受できる世界。
そのしくみが、まさにオーガニックなのです。
オーガニック給食推進の背景やメリット
給食をオーガニックにすることは、地域の農業を支えながら食料自給率を上げ、雇用や経済を豊かにし、環境を守り、子どもたちのカラダを健やかに育むなど、多くのメリットがあります。
ここで、みなさんも一番気になる「農薬」の衝撃事実をお伝えします。
農薬にもいろいろなものがありますが、特に話題にのぼる「有機リン系農薬」と「ネオニコチノイド系農薬」について。
神経機能を阻害するタイプの農薬「有機リン系農薬」が人体にとって有害である、と言われており、2007年欧州では多くが使用禁止になっていますが、日本で市販されている殺虫剤の多くがこの有機リン系農薬です。
神経系阻害剤と呼ばれる種類の農薬は、人間の脳への影響が懸念されています。
ミツバチの大量死が報告されたことでも知られる「ネオニコチノイド系農薬」の使用も、世界で使用禁止が進むなか、日本は規制が緩和されています。
世界でも単位面積あたりの農薬使用量がダントツに高い日本で、子供の発達障害や成人の精神疾患、アレルギー疾患や自己免疫疾患など、病気が昔と比べて多様化している原因として、これら複数の農薬による汚染が関係していると考える専門家も増えてきています。
子供にできるだけ有機食品を与えるべき理由
子供は体重の割に食べる量が大人よりも多いうえ、器官が未熟なので、器官形成が盛んな時期で外部の影響、つまり農薬被害をより受けやすいことが挙げられます。
安全性が疑われる化学合成農薬にさらされた食品を食べ続ければ、どうなるのか……。
子供に脳障害を及ぼしているとされる残留農薬ですが、逆に、有機食品を摂取することで、脳の機能が向上するといったエビデンスがあります。
また、毎日ではないにしても、普段から有機食品を取り入れることで、カラダに溜まった毒素を排出する助けになるともいわれています。
成長期にいる子どもたちが口にする学校給食のオーガニック化は、日本の未来を救うといってもけして過言ではありません。
オーガニックが当たりまえの社会に
オーガニックは、まだ特別な人に向けての贅沢な食べ物である、ファッションである、宗教みたいだ、などと揶揄される部分もあります。
興味はあっても、価格に関する問題がネックなのも事実ですよね。
それでも、消費者が求めるものを生み出すのが生産者。
今後、もしも多くの人が自分や家族の健康、持続可能な社会、循環する生態系、子供たちのよりよい暮らしを望みオーガニックを選ぶなら……、
かつての欧州がそうであったように、市民の声が大きなムーブメントとなり、日本でもオーガニックがあたりまえな社会になる日が来るかもしれません。そう、信じたいですね。
※あわせて読みたい記事
・コンポストや量り売り、循環型コミュニティについては、こちら
・有機JAS認証素材で作る【進化型】マカロンは、こちら
・オーガニックビーガンマルシェは、こちら
・ヴィーガンコスメ、オーガニックコスメの違いは、こちら
【健康】
人間だけに限らず、原料となる家畜や農産物、それを取り巻く土壌や微生物、昆虫まで健康であること。
【生態系】
自然界の動植物や微生物など、生態系の命を守り、生物多様性を保全すること。生態系のバランスを崩さないこと。
【公正】
生産、販売、流通などに関わるすべての労働者から、消費者に至るまで、みんなが公正であること。劣悪な環境下の労働や、不公平な取引を防ぎ、すべての人が幸せであること。
【配慮】
今だけでなく、未来を見据えて生態系や人間への健康に配慮していくこと。