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素材を丸ごといただく!プラントベースホールフードの基礎知識

植物ベース (プラントベース) の食事は、ダイエットやアンチエイジング、さまざまな生活習慣病の予防にも効果があるという科学的根拠があり、動物性食品中心の生活から移行する人も増えていますね。

素材を丸ごと食す プラントベースホールフード (略:PBWF) という言葉をご存じですか?

米国で健康志向の方を中心に広まり、英国では「自然食品」の意味で取り入れる人が増えています。

日本では「植物性一物全体食」とも呼ばれ、お米であれば白米ではなく玄米を、野菜や果物はなるべく皮なども丸ごと食べるというのが基本です。

PBWFと、ビーガン・プラントベース、似ている点や大きな違いを、フードロス (食品ロス) の問題と合わせて解説します。

【目次】

  • プラントベースホールフード (PBWF) とは
    • ホールフードの定義
    • タカコナカムラさんについて
    • ホールフードの取り入れ方の例
  • フードロス問題とPBWF
    • 世界のフードロス
      • フードロスを出さないオランダ「Instock」
      • 兵庫・芦屋の「BOTTEGA BLU.」の例
      • オイシックス「Upcycle by Oisix」の例
  • プラントベースホールフードの未来
  • まとめ  

プラントベースホールフード (PBWF) とは

まずは、ホールフードとは何?というところから。

ホールフードとは、直訳すると「Whole(まるごと)」の「Food(たべもの)」全体食から生まれた言葉です。私たちは、健康で快適に暮らしを望むとき「安全な食べもの」「自然のある暮らし」「豊かな水や森」を求めたいと思うでしょう。「安全な食べもの」は、豊かな大地や水が必要です。農薬や化学肥料、ゴミの問題、毎日使う洗剤のこと、どんなエネルギーを使っていくのかも考えていく必要があります。そのことを「Whole Food Life (ホールフードライフ) 」という言葉で表現しています。それを縮めて 「Whole Food」と呼んでいます。

一般社団法人ホールフード協会 より抜粋

肉や魚、卵などの動物性食品に対して使われるのが「プラントベースフード(植物性食品)」ですが、その中でも、肥料や農薬を使わない自然栽培で作られた食材で加工や精製をせずに、素材の持っているものをすべて食すことをプラントベースホールフードといいます。

ホールフードが見直されている理由のひとつには、飽食化や簡便化が背景にあります。

素材をできるだけそのまま食べる点が共通する「ロー・フード」や「マクロビオテック」も生まれました。

そいみん。

マクロビオティックとは、日本人が考案した一物全体菜食主義の食べ方。魚やダシ、揚げ物を避ければ、ほとんどの場合PBWF食として楽しめます。

ホールフードの概念は、食事だけでなく衣服や日用品まで含んだ暮らし全体、さらには農業や環境までも同じフィールドで考えることと捉えられ、”ホールフード・ライフスタイル“とも言われています。

参照:JMR生活総合研究所/マーケティング用語/ホールフード

タカコナカムラさんについて

ビーガンが食べる大豆ミートのような代替加工食品について、動物や環境にやさしくヘルシーだと感じる人がいる一方で、本物志向、ナチュラル、手頃な価格、という認識は低いというのが現実。

そんな中、1989年から一貫して「Whole Foodでいこう」と主張し、オーガニックの食材や発酵食を使うレシピの開発をされている料理家タカコナカムラさん (一般社団法人ホールフード協会の代表理事)。

食材の選び方や調理法を指すのではなく、健康食としてのオーガニックブームではなく、日本の素晴らしい食文化と美しい自然をずっと残していきたいと願う気持ちでホールフードの素晴らしさを発信されています。

そいみん。

PBWF=自然食品・植物ベースの食事は、すべての動物性製品と油を含む高度に精製された食品を排除または最小限に抑えるものとして定義されています。

PBWFと「ビーガン・プラントベース」であることは、似ている点があるものの、大きく異なる点もあるのです。

ホールフードの取り入れ方の例

日本で最も一般的な作物の栽培方法は、肥料や農薬を使用した慣行栽培

野菜や果物を一般的なスーパーで買って調理するときは、よく水洗いし、皮を向きますよね。慣行栽培で作られた野菜や果物は、残留農薬などに対する不安がつきものです。

一方で、自然栽培によって育てられたものは化学的な肥料や農薬を使用しないため、土をしっかり洗って落としてしまえば、安心してまるごと食べることができます。

そいみん。

自然栽培とは、単純に農薬や肥料を使用しない農法ではなく、自然の摂理に学びそれを調和とともに生き方としても実践すること。

これまで土に施してきた農薬や肥料については、肥毒という形で向き合い、土の本来の能力を引き出そうとする農法。

野菜や果物のヘタや茎、皮や種には栄養がいっぱい。できることならば丸ごと食べたいものですね。

・根菜類の皮は、スープに入れたり、きんぴらのような炒め物、かき揚げやチップスにしてスナック感覚で食べる

・ダイコンやカブの葉は、炒めてふりかけにする

・ニンジンやラディッシュ、セロリなどは実だけでなく葉もサラダや炒め物に使う

・皮が厚めの柑橘類は、ドライフルーツや焼きフルーツ、ジャムやコンポートに混ぜる

そいみん。

ホールフードとは要するに、育ったままの植物性食品 (野菜、果物、全粒穀物、豆類、キノコ類、ハーブ、スパイス、種子類、ナッツ類) をベースにした食事。

肉類、乳製品、白い小麦粉や砂糖、油などの高度に精製された食品は最小限にするか排除します。

全粒穀物を使用していても、パンやパスタなどに加工されたものは栄養価が低め

農薬残留検査がしっかりされている商品を選ぶのも重要なポイント!

こんな商品もある!

皮をむいて食べるのが一般的なバナナですが、宮崎県のNEXTファーム宮崎では国産かつ皮まで食べられる無農薬栽培のバナナ「NEXT716」を作っています。

イタリアンの巨匠、落合務シェフがアンバサダーに就任したことでも話題の皮ごと食べられる「やっちろバナナ」は、無農薬で作った熊本県産オーガニックバナナ。

食品大手のミツカングループが始めた新プロジェクト「ZENB」は、植物の皮、芯、さや、種、わたなど従来捨てられてきた部分を可能な限りまるごと使うことがコンセプト。

フードロス問題とPBWF

世界のフードロス

今後、世界の人口が増加し、食べ物が足りなくなるという問題に直面しています。まずは、フードロス (食料ロス) 低減を促進することが叫ばれています。

食料ロスの低減は、土地や水、エネルギーや肥料などの自然資源が限られ、また、すべての人々に十分な、栄養に富んだ食料を生産するために費用対効果の高い解決策を見出さなければならない世界の、忘れてはならない最も重要な優先事項であるとされています。

参照:(社)国際農林業協働協会/世界の食料ロスと食料廃棄 その規模、原因および防止策

フードロスを出さないオランダ「Instock

オランダの廃棄食材レストラン「Instock」では、調理時にフードロスを出さない工夫が掲げられています。「根から茎まで、鼻から尾まで楽しむ」というもので、もっともシェフのクリエイティビティが発揮されるとしています。

食材を余すことなく使い切れるレシピやメニューの組み合わせから、発酵や乾燥など、余った食材を長期間使える形で保存したり、直接は顧客に提供しない部分も出汁やスープづくりに活用するなど、徹底的に食材を使い切るためのアイデアを考えることが求められます。

兵庫・芦屋の「BOTTEGA BLU.」の例

日本サスティナブル・レストラン協会」国内第一号店である「OTTEGA BLU. (ボッテガブルー)」は、大島シェフがイタリア修行時代に培った「もったいない精神」を守り続け、端材はだし汁に、失敗したお菓子の生地はオーブンシートの代わりにするなど、店内での食品ロスをゼロにする取り組みを当然のこととして実施しています。

オイシックスの例

2021年7月にアップサイクル商品のみを販売する食品ロス解決型ブランドUpcycle by Oisix」を立ち上げ、プライベートブランド商品「ここも食べられるチップス」シリーズを販売。

見栄えや食感の悪さなどから捨てられていた食材に新たな価値を持たせ、新しい食の楽しみ方や驚きを提供しながらフードロスも削減しています。

プラントベースホールフードの未来

プラントベースホールフードは、化学的な肥料や農薬を使わない分、土壌を整備したり害虫を駆除したりするのに労力がかかって量産しにくいことから、慣行栽培に比べて生育期間も長くかかり、価格が高めです。

一方で、ビーガンやプラントベースなどの菜食生活に取り組む人は、増加傾向にあります。

今後ますます、食べ物の摂取を通して健康を気づかう人が増えることで、飲食店においては食品ロスなどの観点からも、プラントベースホールフードを積極的に取り入れることで、サステナビリティの向上にもつながることが期待されます。

まとめ

タカコナカムラさんの言葉に、ホールフードのゴールは、安全な食べものと豊かな自然が次の世代まで残ること、とあります。

プラントベースホールフードは、通常は料理の過程で捨ててしまう野菜や果物のヘタや茎、皮や種なども丸ごと食べるので食品ロス削減にもつながります。

大量に食材を使用する飲食店では、皮をむく手間が省け、大幅に仕込みや調理時間短縮できるというメリットも。

化学的な肥料や農薬を使わない自然栽培で生産されるため、環境にはもちろん、生産者の健康面でも負荷が少ないとも考えられます。

ビーガンとの類似点もある、プラントベースホールフードについてご紹介しました。

※2023年代替食については、こちら
プラントベースについては、こちら