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マイクロプラスチック、ナノプラスチックの害を知る【前編】

海洋ごみ問題は、SDGsにおいても重要課題であり、ニュースでも魚の胃袋からプラスチックが発見されたなどと話題になっていますね。海の生き物たちがごみにまみれた姿は、ビーガンでなくとも心を痛めることでしょう。

話は、そこで終わりません。先日、さらに驚愕の報告がありました。目に見えない「マイクロプラスチック」や「ナノプラスチックが、すでに私たちの体に溜まり始めている、健康被害を起こす可能性があるというのです。

プラスチック自体の有害性については、まだまだ研究段階。賛否両論ありますが、人体では血液や糞便、胎盤や母乳からも見つかっているとの報告もあります。

細胞膜を通り抜けるナノサイズだと、体中のどこにでも……つまり、我々の脳にも溜まっている可能性があると聞いて、大変ショッキングでした。

ヘルスハック2024 ~vol.2~】は、プラスチックをただ怖がるのではなく、プラスチックの害からできるだけ身を守るにはどうすべきかを考えます。

環境や生体に悪影響を与えるマイクロプラスチックやナノプラスチックが、どう発生しているのかを知る【前編】、私たち消費者ができること【後編】にわけてお伝えしますね。

Contents

  • 海洋プラスチックごみ問題とは
    • 太平洋ごみベルト
  • どんどん細かくなるプラスチックの影響
    • 製品から生まれる一次マイクロプラスチック
    • 劣化によって細かくなる二次マイクロプラスチック
  • 残留性有機汚染物質 (POPs)とは
  • 深刻なプラスチック汚染の最新報告
  • まとめ

海洋プラスチックごみ問題とは

私たちの生活に欠かせないプラスチックですが、世界の陸地で年間3,000万トンも不法投棄され、800万トン以上が毎年海へ流れ込んでおり、海洋汚染は深刻化。海の生態系や人体への影響が世界の課題となっています。

日本では、2020年7月からプラスチック製レジ袋の有料化が義務化されたり、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取り組み(3R+Renewable)を促進する法律をつくったりと、教育機関や行政も一丸となって対策しています。

そいみん。

1960年代から、すでに一部の研究者の間で注目されてきたプラスチック問題。予想よりもはるかに速いスピードと深刻さで、地球を脅かしています。

2050年には世界の海に暮らす魚の量よりも、海洋プラスチックごみのほうが多くなると予測されています。

太平洋ごみベルト

インド洋・太平洋・大西洋には、還流と呼ばれるポイントが5つあり、大きな渦潮を形成します。海に流れてきたプラスチックごみは、この還流に集まり、海面を覆います。

現在、5つの還流全てで汚染が確認されており、ハワイとカリフォルニア州の間にある太平洋ごみベルトと呼ばれる海域では、重さおよそ8万トン、面積は160万キロ㎡(日本の面積の4倍)のごみが漂流しています。

どんどん細かくなるプラスチックの影響

目に見える大量のプラスチックごみも大問題ですが、プラスチックが劣化し、目に見えないほど細かくなってしまったマイクロプラスチックは、さらに深刻な問題を引き起こします。

製品から生まれる一次マイクロプラスチック

一次マイクロプラスチックは、たとえば、スクラブ入り製品(化粧品や研磨剤入り歯磨き粉など)、マイクロファイバー(化学合成繊維の衣類やタオルなど)に使用されています。

生活の中で使われた一次マイクロプラスチックは、排水溝から海へ流れていきます。粒子がとても細かいため、製品化された後の処理対策は今のところありません。つまり、自然環境中での回収は、困難なのです。

そいみん。

最近では、止まらない環境汚染を考慮し、マイクロプラスチックを含む製品の販売規制や使用制限をしている国や地域、企業が増えてきました。

劣化によって細かくなる二次マイクロプラスチック

二次マイクロプラスチックとは、レジ袋やペットボトルなどの大きなプラスチック製品が自然環境の中で徐々に砕け細かくなったものを指します。

二次マイクロプラスチックには、紫外線が関係しています。海に浮かぶプラスチックごみが砂浜へ打ちあげられると、紫外線や日光を受けて劣化が進みます。さらに、雨や風によって砂と擦れ合うことで、どんどん細かなプラスチックになります。

細かくなったプラスチックは、再び波によって海へ戻ってしまいます。

残留性有機汚染物質 (POPs)とは

環境省の解説によると、残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants/POPs)とは、天然に存在しない人工的な化学物質であり、残留性が高く、生物の体内に蓄積しやすく、使用した地域から遠く離れた地域に移動することで、そこに生息する人や野生生物にも影響を与えるおそれのある物質です。

たとえば、ペットボトルの蓋には、ノニルフェノールという環境ホルモンの一種が含まれることがあり、生殖機能の異常やガン発生率の増加、神経系、免疫系の異常などを引き起こすという報告があります。

深刻なプラスチック汚染の最新報告

プラスチックはその性質上、分解されて自然に還ることはありません。毎年800万トンずつ流れ出る海洋プラスチックごみは、永遠に海に存在し続けるのです。

実はプラスチックを燃やすと、地球温暖化の原因となる温室効果ガスが発生してしまいます。

ハワイ大学マノア校海洋地球科学技術学部のデービッド・カール教授は、プラスチックが劣化する過程で、温室効果ガスの一部であるメタンやエチレンを放出すると論文で発表しています。

もっと身近に感じられる衝撃のニュースがありました。1日に1.5〜2Lのペットボトル入りの水を飲む人は、年間およそ9万個のプラスチック粒子を摂取することになることが報告されています。

このほかにも、芳香剤柔軟剤。合成香料を閉じ込めたマイクロカプセルは、衣服に付着して熱や摩擦などで膜が破裂するたびに香料が放出するしくみです。

一回に使用する柔軟剤には、170万個ものマイクロカプセルが入っているといわれ、洗濯排水として流れていき、残りは衣類に付着したり、環境に飛散しているそうです。

部屋干ししていれば、テーブルや家具、床に、マイクロカプセルが落ちていることになります。私たちは知らず知らずのうちに、体内にとりこんでしまっているわけです。

日本の新しい公害として、「マイクロカプセル香害」が世間を騒がせていますね。長時間、香りや成分にさらされることで、頭痛やアレルギーを引き起こしたり、人体に影響が出るケースがあります。同じ原理で、農薬などにもマイクロカプセルが使われています。

まとめ

海の生物が、プラスチックを誤って食べたり、体に巻きついたビニールごみで身動きが取れなくなっている姿をみれば、誰でもなんとかしなければと感じるでしょう。

それも重要ですが、さらに深刻なのは、目に見えないマイクロプラスチック、ナノプラスチックが、大気中に大量に巻き上げられ、浮遊していることなんです。吸い込んで肺に入ると、長時間体内にとどまります。有害物質が付着していれば、体に影響があっても、なんら不思議はありませんよね。

プラスチック自体に有害性があるという人たちもいますし、プラスチック自体には有害性がないという人もいます。ただ、プラスチックには製品の”性能”を上げるためのさまざまな添加剤(酸化防止剤や防カビ剤など)も入っており、残留あるいは海に溶けだすことで有害化すると考えられています。

プラスチックは無くしたほうがいい、でも、これからも私たちの生活に欠かすことができないのも事実。では、私たちにできることは何か、次回【後編】でお伝えします。

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