地球を守るために、エシカルでサステナブルなヴィーガンレザーを購入したいと思う人が増えています。あなたなら、どんな基準で、ヴィーガンレザーを選びますか?
単にデザインが気に入って購入するのも、けして悪くはありませんが、正しくヴィーガンレザーを選ぶためにも、いくつかのポイントを知って、環境負荷に加担しているものを間違って購入しないようにしたいものです。
今回は、ヴィーガンレザー(後編)として、購入前に知っておいてほしい、いくつかの問題点をまとめました。
ヴィーガンレザーの種類や原材料、製品例をお伝えした前編とあわせて、参考にしてくださいね。
【目次】
- ヴィーガンレザーが注目される背景
- ヴィーガンレザーと似た言葉「エコレザー」とは?
- ヴィーガンレザー、3つの種類
- ヴィーガンレザー(合成皮革・人工皮革)
- ヴィーガンレザー(植物由来)
- ヴィーガンレザーに対して指摘される問題点
- 動物と環境の両方を守るには
- まとめ
ヴィーガンレザーが注目される背景
持続可能な開発目標 (SDGs) に注目が集まる中、牛や馬や羊など動物の皮が原料である従来の革製品については、動物の命を犠牲にし、飼育時や製造過程における自然の汚染、環境負荷が問題視されています。
・革の製造工程では、水を大量に消費する
・革の「なめし」という製造過程で使われる化学薬品は毒性があり、環境だけではなく人体にも有害
動物愛護、環境問題、人体への影響など、社会的・倫理的観点から代替素材として開発されたのがヴィーガンレザーです。
ヴィーガンレザーと似た言葉「エコレザー」とは?
ヴィーガンレザーとよく混同されるのが、エコレザー。
財団法人日本環境協会が定める日本エコレザー基準(JES)によって定義されているものの、本革とヴィーガンレザーとで、異なる意味で使われている場合があり、わかりづらく、あいまいな印象です。
〈本革の場合〉
・動物の皮から革製品を作るときに出る切れ端を溶かして、樹脂などで固めたもの
・「環境負荷を減らすことに配慮している」、「環境にやさしい」と認められるもの
〈ヴィーガンレザーの場合〉
・動物性原料不使用のヴィーガンレザーを、エコレザーとあえて呼んで販売しているケース
・本革よりも価格が安い「経済的な革」という意味で、エコレザーと呼んでいるケース
本革とヴィーガンレザー、双方の違いは原料に動物の皮を使っているか否かであるにも関わらず、エコレザーというワードが両方で使われる場面があるので、注意が必要です。
ヴィーガンレザー、3つの種類
動物由来の素材を一切使用せず、植物や人工的な素材を使うヴィーガンレザーには、「合成皮革(合皮)」「人工皮革」「植物皮革」の3つの種類があります。
ヴィーガンレザー(合成皮革・人工皮革)
・ポリウレタン樹脂、ナイロンやポリエステル繊維などが原材料
・本革より製造や加工が容易、品質にムラがなく大量に製造できる
・本革より低コスト、人工皮革は、本革により近い風合いをだせる
ヴィーガンレザー(植物由来)
・植物の実や皮、芯など植物由来の素材、植物性樹脂がベース
・原材料によっては、食品廃棄の問題解決にもつながる
・化学繊維や樹脂を主な原材料とする合成皮革や人工皮革と比べて、より自然環境への負荷が低い
ヴィーガンレザーに対して指摘される問題点
ヴィーガンレザーとして売られているもの全てがサステナブルかというと、そうではありません。
石油由来の素材から大量生産で作られた合成皮革にもかかわらず、環境にやさしいヴィーガンレザーとうたっている場合もあるため注意が必要です。
植物性の原料から作られたヴィーガンレザーは、廃棄しても土に還る「生分解性」がある点で、より環境に配慮していると言えるかもしれません。
しかし、原材料の構成などは、製造元やメーカーにしかわからない場合がほとんどです。
動物と環境の両方を守るには
動物愛護が一番の目的であるビーガンは、動物を殺めないヴィーガンレザー製品を購入したいと思うはずです。
しかし、環境問題も厳密に重視するなら、素材だけでなく、たとえば接着剤や磨き剤も天然素材を使用し、すべて分解され自然にかえるものを選択したいと考えるかもしれません。
一般的に言うと、本革は耐久性があって、いずれは生分解されます。でもプラスチック繊維は、製造時に大量の二酸化炭素を排出し、分解されずに残り続けるものもあります。
そのまま自然界に残ってしまうと、海に流れ込んで海洋環境の悪化につながります。長期的には動物たちに害を与えることになるかもしれません。
さらには、逆の発想で「新品を買わない」という考え方もあります。たしかに、私たちは今、物に埋め尽くされています。
新品は全て、生産・輸送などの工程を経ており、貴重な化石燃料を燃やしているという主張です。
今持っているものを大事に長く使い、購入頻度を減らすことは、ゴミの量や焼却時の二酸化炭素排出量などの削減にもつながります。
同じビーガンでも、どこで線引きするかは常に論議のタネです。考え方は人それぞれ、自分に無理なく出来るところから始めればいいと思います。
適切に処理されなかったプラスチックごみが、直接海へ、あるいは河川から海へと流れ出て海洋へ影響を与える海洋プラスチック問題がクローズアップされていることも、この機会に知っておきましょう。
まとめ
環境問題における多くの難題と同様、通常のレザーとヴィーガンレザー、どちらにも長所と短所があります。
原材料に化学素材を使用する合成皮革や人工皮革も含まれていたり、製造時の二酸化炭素排出量の多さや、天然皮革のように土にかえる素材ではないことなどを考えると、100%環境にやさしいとは言い難いヴィーガンレザー製品もあります。
環境を配慮するのであれば、合成皮革や人工皮革ではなく植物由来のヴィーガンレザーや、100%植物由来のプラントレザーがおすすめです。
自分はどのくらい環境問題や動物愛護に取り組むのか、ヴィーガンレザーに関して正しく理解したうえで、自分らしい選択を!
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企業理念やコンセプトとしてヴィーガンやサステナビリティを掲げているブランドの場合、素材だけでなく、裏地やパッケージにいたるまで配慮した製品であったり、動物の保護活動や環境保全活動にも力を入れていることが多いですね。