健康やアレルギーを気遣う人に注目されている、グルテンフリーのパン。
小麦のかわりに日本人になじみ深い米粉を使ったパンの人気も上昇中ですが、ドイツやロシアなどで親しまれるライ麦を使ったパンも、選択肢のひとつとして食事に取り入れると楽しみがグッと広がります。
花粉の季節で体調がすぐれない方も、グルテンを控えることで症状が緩和するケースもあるといわれています。
今回は、グルテンを控えられるだけでなく、栄養価にも優れ、腹持ちのよさからダイエットにも向いているとされる「ライ麦パン」に注目。
ライ麦の特徴や栄養素、ライ麦パンの代表ドイツパンの種類を前編で、後編は都内のドイツパン専門店や、そいみんのおすすめ、ライ麦パンに合うジャムやスプレッドなどをまとめてご紹介します。
【目次】
- ライ麦について
- ライ麦の特徴
- 小麦との違い
- 「ライ麦パン」と「黒パン」は同じ?
- ドイツパン
- サワー種の特徴
- ドイツパンの種類
- 初心者でも食べやすいドイツパンは?
- まとめ
ライ麦について
ライ麦とは、イネ科に属する一年草。小麦の栽培が難しい北欧の寒冷地域、やせた土地でも安定して収穫ができたため、食料確保が厳しい地域の主食とされてきました。
しかし、今ではライ麦の栽培量が少なくなり、小麦よりも高値で取引されることも少なくありません。
ライ麦の特徴
ライ麦は、栄養価が高く、ビタミンを豊富に含んでおり、体に必要な栄養素の補給に大きく役立ちます。
ライ麦には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。水溶性食物繊維は、栄養の吸収を穏やかにし、食後の血糖値の上昇を緩やかにしたり、コレステロールを体外に排出する助けをします。
不溶性食物繊維は水分を吸収して便のカサを増やし、排便をスムーズにさせる効果が期待できます。
ライ麦にはさまざまなビタミンが含まれています。特にビタミンB群が豊富。炭水化物などの代謝をサポートします。
高血圧や脳卒中、むくみ予防の役割を果たすとされるカリウムも摂取できます。
小麦との違い
ライ麦と小麦の違いとしては、グルテンの含有量に違いがあります。
グルテン(グルテニン+グリアジン)は、小麦に含まれる特有のタンパク質です。一方、ライ麦には「セカリン(グリアジンに似た成分)」が含まれています。
ライ麦は、完全にグルテンフリー食材とはいえないので、注意が必要です。
ライ麦と小麦では、それぞれパン作りにも違いが出ます。小麦粉を使った場合はパンがふんわりし、もちもちした食感。それに比べてライ麦粉を使ったパンは、かための食感で、中身が詰まったどっしり感が生まれます。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、ライ麦パンのカロリーはほかのパンと比較するとほぼ同じですが、ライ麦粉の割合が多いほどパンの糖質も抑えられます。
「ライ麦パン」と「黒パン」は同じ?
黒パンは、ドイツのライ麦パンの別名としても使われますが、正しくはライ麦パンと黒パンは種類が違います。
ロシア・ウクライナで昔から食べられているパンが「黒パン」。作り方はドイツの伝統的なライ麦パンレシピと同じですが、ライ麦全粒粉を100%使用するのがロシアの黒パンレシピの特徴。
「ライ麦の別名が黒麦である」「パンの色が真っ黒」など、名前の由来はいろいろ。
黒パンは、一般的なライ麦パンよりもさらに密度が高くずっしりしています。少量でもたっぷりの栄養が摂取でき、常温でも長期保存ができる点がメリットです。
ドイツパン
ドイツは、世界屈指のパン大国。種類も豊富で、大型のパンでも300種類以上、菓子パンや小型のパンを含めると1500種以上のパンがあるといわれます。
ドイツ北部で食べられている、黒くてずっしりとした印象のあるライ麦パンが代表的ですが、南部では主に小麦粉を使用したものが多く食べられています。
ライ麦にはグルテンが含まれておらず、パンが膨らみにくいので、小麦を混ぜて使います。ライ麦粉の配合量によってパンの呼び名が変わります。
ドイツパンを食べると酸味を感じる場合があるのですが、これはドイツパンではパンを膨らませるためにイーストではなくサワー種を使っているためです。
サワー種の特徴
サワー種とは、ライ麦と水から作った発酵種で、乳酸菌や酢酸菌がパンに酸味や香味を与えます。また、生地を扱いやすくしたり、保存性をよくしたりする働きもあります。
サワー種を使わずにライ麦粉100%でパンを作ると、生地はずっとドロっとしたままで、オーブンで焼き上げても、ネバっとした口当たりと酸っぱさだけが残るパンになります。
サワー種を完成させるまでには数日かかり、時間と衛生管理がとにかく大変なのだそう。
ドイツパンの種類
ここで、代表的なドイツパンをいくつかご紹介します。
塩気がクセになるお菓子のようなパンが「プレッツェル」です。ラテン語で「腕」という意味。
ユニークな形と、褐色の焼き色が特徴。大きさや硬さは地域やお店によりさまざまで、甘い味つけのものもありますが、塩気を効かせたものが多いです。
ライ麦は使っておらず、外はカリッと、中はもっちりとした食感で、ビールのおつまみにもぴったり。
シュトーレンは、ドイツでアドベント (Advent) と呼ばれる、クリスマス前のシーズンに食べる定番のお菓子。
生地にレーズンやナッツを混ぜ込み、仕上げに表面が真っ白になるまで粉砂糖がまぶされています。
名前の由来は、「白い砂糖に包まれた見た目が白いおくるみにくるまれたイエスのようだから」「シュトレンという名前には、坑道という意味があり、トンネルの形に似ていることから名づけられた」など諸説あります。
日持ちするので、クリスマスまでに少しずつスライスしながら食べて楽しみます。
ドイツの日常的なパンといえば、「ミッシュブロート」です。ライ麦と小麦がほどよい割り合いで含まれているため、ライ麦の独特な風味が苦手な方でも比較的食べやすいです。
ドイツでは、このように小麦粉とライ麦の配合の割合の違いによっても名前がついており、小麦粉の割合の多いものから順に
「ヴァイツェンブロート」ライ麦は10%未満
「ヴァイツェンミッシュブロート」、ライ麦は10~50%未満
「ミッシュブロート」50% ※初心者におすすめは、ライ麦粉が10%以上50%未満
「ロッゲンミッシュブロート」ライ麦は50~90%未満 ※Lindeのパン (写真上) はライ麦が70%
「ロッゲンブロート」ライ麦粉が90%以上のもの
の5種類に分けられます。
「ブロート」は「パン」、「ロッゲン」は「ライ麦」、「ミッシュ」は「混ぜる」という意味です。
ドイツパンは、副材料や成形の仕方、粉の挽き方によっても呼び方が変わる事から、種類も多く、職人のこだわりが強いパンなのです。
初心者でも食べやすいドイツパンは?
ドイツパンの特徴として、ライ麦が多いとずっしりとした生地で酸味も強く、少ないと軽い生地で酸味も弱いパンに仕上がります。
小麦とライ麦の配合がほどよい「ミッシュブロート」(写真上)は、ドイツのライ麦パン入門編として最適。
ライ麦はまだ抵抗があり、小麦のドイツパンから始めたいなら、けしの実のトッピングでおなじみの「カイザーゼンメル」(写真下)。カイザーは「皇帝」、ゼンメルは「小さいパン」という意味です。
特に何ものっていないプレーンタイプのほか、白ゴマや黒ゴマ、カボチャやヒマワリの種などがちりばめられているものもあります。
王冠のような模様がついていることから名づけられたのだとか。オーストリアが発祥ですが、隣国ドイツでも朝食によく食べられています。小麦のパンなのでクセがなく、シンプルな味わい。サンドイッチにもぴったりです。
ドイツの小麦パンに慣れてきたら、栄養価も高く、グルテンを控えることができるライ麦を配合したパンにぜひ挑戦してみてください。
ライ麦の風味や独特の酸味に慣れてくれば、いつのまにかクセになり、奥深い魅力にはまってしまうかもしれませんよ。
まとめ
日本では小麦を使ったいわゆる「白パン」が主流なので、日常的にライ麦パンを食べている方は少ないと思います。
栄養価が高く、バリエーションも豊富なライ麦パンを上手に取り入れれば、グルテンを控えながら、おいしく健康的なパン生活を続けることができそうです。
次回【後編】では、ライ麦パンのおいしい食べ方、都内のドイツパン専門店、そいみんのお気に入り、ライ麦パンに合うジャムやスプレッドなどをご紹介しますね。
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